1未満
タイル

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「新建築住宅特集」とLIXILの共同企画「建築家の夢のタイル 新しい風景を作るエレメントを創作せよ」にて制作した「夢のタイル」で、私の構想を実際にLIXILやきもの工房により制作した。
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絵を描くとき、絵具を塗り重ねながら徐々に全体をかたちづくるように、建築も、風景の中にどうにあるべきかを都度考えながら、要素を足し引きすることで全体をかたちづくっていきたい。街の中でも、自宅の部屋の一角でも、あらゆる要素が絡み合いながらその場はできている。そのような風景の中で、全体像がすぐに想像できてしまうような唯一の方法を選ぶのではなく、いくつもの状況に対する選択の積み重ねによってまとまりをつくっていく必要がある。
このタイルは、鋳込み製法により格子状に成形し、表面に釉薬を塗布している。格子状であることで輪郭に凹凸があり、ずらして噛み合わせたり、棒を揃えて並べ一様な格子柄を作ったりなど、いくつかの並べ方がある。また、90度回転させると表面となる棒の縦横方向が変わり、光の反射によって色が変化して見える。平面展開だけでなく、格子の隙間で立体的に噛み合わせると、下地にはない出っ張りをつくったり、新たな輪郭をかたちづくることができる。さらに表裏にも凹凸があり、ずらして重ねることで格子の隙間から見える下地の面積が変わり表面に濃淡が生まれる。荷重やジョイントの検討は必要だが、色数や重ねる枚数によって面の中にムラや奥行きをつくり出せる。構造や設備など機能により設計された骨格と、そこにいる人のふるまいや周りの環境の間を、柔軟に取り持つ役割を担うだろう。
1枚のタイルがひとつの単位に満たないことで、全体のあり方を思考し続けることができると夢見て、「1未満タイル」と名付けた。このタイルでできた集合体の姿もまた、おかれた風景と共にあることでようやく満たされるのだと思う。


1未満タイル

/Data

Usage : Tile
Client : LIXIL, 新建築住宅特集
Construction : LIXILやきもの工房
Completion date : 2022.02


/Link

新建築住宅特集 2022 4月号