A dimple of Hamacho

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2020年の春に改修したTANNERAUM(以下、ラウム)のエントランス改修プロジェクトである。コロナ禍をはじめさまざまな状況の変化から、ラウムの重心がパン屋の倉庫からギャラリー運営に移り、1階と2階それぞれへの出入口が必要になった。
桜並木に面する既存建物のファサードは、中央に開口部があり、脇に赤い雨戸の窓が並ぶ。ひとつの建物に複数のできごとを内包するにあたって、パン屋の顔として捉えられていた堅固でシンメトリーなファサードの端をへこませ、えくぼのようなポーチをつくることで、新しい距離感を生むことを試みた。
二つあったパン屋の入口の自動ドアは一つに絞り、もう一つを腰壁で埋めることで開口部を強調した。ラウムへの動線は、へこませたポーチ空間を経由することでパン屋と切り分け、扉を外壁より奥に引き込み、回り込むような設えとした。

ポーチ空間は、パン屋とラウムそれぞれのエレメントを持ち寄ってできている。例えば、開口部の枠の60mmの角材やペールグリーンのプレートはラウム空間の骨格を担う要素である。腰壁の薄ピンク色はペールグリーンと対になる関係であり、外壁タイルのベージュや雨戸の赤を尊重したパン屋のエレメントとして新たに加えた。そもそもラウム改修の際に用いた緑色は、パン屋のカラーである赤との対比や緑道との同期によって選ばれた色だが、翻ってポーチの腰壁の色を決める起点になっている。

パン屋を横目にステップを上がりギャラリーへと向かう、変化する視線の動きをつくり出すことで、駅から甘酒横丁を抜ける時に感じる街の匂いや、目移りしながら歩くテンポ良い楽しさを、この小さな街角の建物まで引き延ばしたいと考えた。


A dimple of Hamacho

/Data

Usage : Facade
Client : Tanne , TANNERAUM
Construction : Tokyo Kenchiku Plus
Area : 6㎡
Date : 2022.3
Photo : Nanako Ono