角部屋の
眺め
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マンションの角部屋の全面改修。1日のほとんどを徒歩圏内の事務所で過ごすオーナーの自宅でもあるが、週に1回程度仕事仲間を招いて団らんを楽しめる空間にしたいという希望があった。そのため、変形したプランを持つそれほど大きくないボリュームを、眺めのよい3つの窓を含むL字のリビングダイニングと寝室・玄関ホールとに分け、その間を引き戸で仕切る構成に変更した。
これをできるだけ手数の少ない方法で行おうとするのだが、できるだけ気積を大きくするために取り除いた仕上げの内側からは、柱と梁と設備らの複雑な絡まりが現れた。部屋のどこにいてもつねに視界の端に入ってくるさまざまなディテールや柱や梁の現れが、空間の使い方や領域の感じられ方に相対的に大きく作用してくるため、スタディの中心はこの調停に当てられた。したがって取りうる方法としては、ひとまず何かを解決するために考えたディテールのスタイルを反復したり流用したりして全体にまとまりがつくれないかを試すことになる。しかし、それがかえってうるさくなったり別の解決策を阻んだりするので、再びそれらの解決策を講じる作業を延々繰り返すことになる。
手がかりの初手として主要なエレメントである引き戸はまず濃紺に、そののち45度の電気配線カバーをオレンジに、既存壁と新規壁の見切りにツガをアクセントに、というように順に仮定しながら配置していき、それらを伏線として色相や45度カットといった処理を複層させ、ときどき立ち止まってあらゆる角度から空間を見返して、素材や色を決断していく。
そうして、都度構えられた無数の視点場=眺めが、小さな空間にこだますることになる。
角部屋の眺め
Scenes of A Corner Room
/Data
Usage : Residence
Location : Tokyo
Team : Tezzo Nishizawa
Construction : todo
Area : 55㎡
Completion date : 2020.11
Photo : Nanako Ono