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夫婦と3姉妹の5人家族のための診療所兼住宅。建主は、明るい待合室のある診療所や、子供の姿が見えるキッチン、スムーズな家事動線、キッチン天板の素材、駐車場、鉄筋コンクリート造や連窓、そして南北に長い敷地に3層の最大限のヴォリュームといった断片的なイメージをもっていた。また、建主との対話によって生活のイメージが具体化していくと、内部のレイアウトや設計の内容もどんどん変化していった。

生活上の要望や診療所の機能配置を総覧すると、この大きな住宅をひとつの形式やルールで解くのは難しいだろうと考えた。また、この町のスケールと隣接する住宅やマンションとの距離、隅切り、道路斜線を考慮すると、いくつかのブロックや面の集合として全体のヴォリュームを解くのがふさわしいとも考えた。したがって、構造は南北に太い背骨をもち、一定のルール上で柱・壁を動かせる壁式コンクリート造とし、ブロックを肉付けするように調整していくこととした。

1階の診療所は、部屋中央に主要諸室を配置、庭に面する東側に待合室、細い道に面した西側にバックヤードを設け、回遊できる動線計画とした。2,3階の住居は、敷地の周縁をなぞるように動線をつくり、その上に諸室を並べる。大きさの違う躯体や窓のリズムによって、長い空っぽの空間を行ったりきたりぐるぐるしながら断片的なイメージが繋がっていくだろう。ひと繋がりのグラデーションでも、バラバラなもので全体をつくるモザイクでもないあらわれを目指した。