厚みのある皮
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このプロジェクトは、大学キャンパス内に拠点を持つ企業の、学内での移転に伴う改修工事の第2部である。 この企業で扱っている素材は、主に 乾燥剤として知られるシリカゲルを扱っており、その性質はあらゆる産業への活用が可能で、日々あらゆる 実験・開発を行なっている。
今回の改修工事は、そんな企業のブランディングの一端を担うような空間設計を求められた。 第1部は、製造開発部門と事務部門の 配置計画と、壁の色を白から少しくすんだグレーに塗装することで空間のトーンを設えた。 そして今回の第 2部では、今後の空間整備の方向性を示す補 助線となるようなカーテンを制作した。
この建物は、 キャンパスの中央のシンボリックな場所に位置し、実験室は正面玄関の直上にあり、 正面玄関と内部廊下、 採光のための中庭に対して開口部のあるL字型をしている。 その部屋の正面玄関側と内部廊下に対して、それぞれ性能(遮光/目隠し)は異なるがカーテンのよ うなものが求められ、 同じく外部 (正面玄関/廊下) に対するファサードと捉えて計画を行なった。
経糸と緯糸で2色の布を織り混ぜる方法 (組織) を用いて、 ギンガムチェックのように3種類の透過度の異なるセルの集合として木漏れ日のような面をつくるカーテン とのれんのように先が分かれていて通行できるカーテンをつくった。また、正面玄関側に位置するサンルームの入り口には、格子模様とのれん双方の構成を組み合わせたカーテンを設け、空間の一体性を図った。 採用したペールグリーンは、 前実験室から持ち込まれたスチールラックのグリーンや第一部で選んだグレーとの協調を図る要素。
今後どんな変化が必要となるか分からない場所にとって、選択肢を与えるような存在になることを期待した。
完結した道具ではなく、組織をもつ素材のとある姿と捉えると、このカーテンは生地や皮に近い。
厚みのある皮
/Data
Usage : labolatory
Client : 株式会社DPS
Collaborator : Yuki Tsutsumi
Completion date : 2022.10
Photo : Yu Suzuki