「ぶんと私の家」
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人の家に猫が暮らすのではなく、猫の家をつくって人がそこに住まわせてもらうのでもなく、<猫と人の家>をつくってみたいと思った。
ちょうど一年前の今頃、私と夫が暮らす部屋に「ぶん」という仔猫がきた。私たちがご飯を食べようと食卓につくと、さっきまで窓の外を見ていたぶんは、ひょいひょいと食卓横の棚にのぼってこちらを見下ろす。そのまま眠ってしまったぶんが目を覚ますと、デスクで仕事をしている私に気づき、今度はそばの本棚に飛び乗り、こちらを気にしながら外を眺めたり眠ったりしている。
すでにあった私たちの部屋での過ごし方に応じて、ぶんはぶんなりに居場所を変えて過ごしていて、私はふと「ぶんと暮らしている」ことを実感する。
このような、それぞれの行為が相関して同居している空間構成を<シーンセット>と呼んでみる。
もしも、<シーンセット>を空間をつくる単位として扱ったら、<ぶんと私の家>をつくれるかも!
そう思いつき、今暮らす部屋での<ぶんと私のシーンセット>を拾い上げ、それらを繋ぎかえることで新しい家を構想した。
そういうちょっとおかしな設定から始めてみると、建物の間取りや構造形式など本来決めるべき事柄が定まらないままに、ぶんが眺める場所や歩く道と、私が食べたり働いたりする場所が、一緒くたに混ざり合って、暮らしの骨格が立ち上がってくる予感がする。
「ぶんと私の家」
/Data
Exhibition : 猫目線の家
Location : Karimoku Commons Tokyo
Client : RINN
Completion date : 2022.02